今までエレベーターがなかった医院に新たに設置したいというご相談をいただくことがよくあります。
EVを設置する場合は昇降設備の確認申請が必要です。
しかし既存建物が完成時に検査済証を交付されていない場合はエレベーターの確認申請は基本的に認められません。
※「検査済証」についてはこちらをご参照ください。→ 医院計画02;確認申請書・検査済証は大切に
これが大前提となります。
以前(2005年)既存医院にEVを設置したことがあります。その時は既存建物の内部にエレベーターを設置しました。
外部設置も検討しましたが、建物の構造・法規制・動線の問題を考慮した結果、建物内に複雑な条件をクリアーできる場所が幸い見つかったからです。
建物内部に設置したため床面積の増加がなく、用途変更もしませんでしたので建築確認申請は不要でエレベーターの昇降機設備確認申請だけが必要でした。
もちろん建物の構造的な安全性のチェックは行いました。
もし既存建物の外部に設置される場合は、床面積が増加しますので法規上増築となり、建築確認申請が必要となります。※
(エレベーターの昇降機設備確認申請も必要です。)
※但し防火・準防火地域外で延床面積10㎡以下の増築は建築確認不要
また、増築の場合は既存建物の現行法規への遡及の問題があります。
詳細は記しませんが、遡及緩和を受けるにはかなり複雑な検討をする必要があります。
どちらにせよ既存建物にEVを設置する場合は、法規・構造・計画の整合性を詳しく検討する必要があり、設置不可という結論が出る場合も多いようです。
実際にご相談いただく方の中にも、建物の外部なら後から簡単にエレベーターを設置できると思われている方がいらっしゃいますが、現実はそうではありません。
またホームエレベーターを設置できると思っておられた方もいましたが、ホームエレベーターは戸建て住宅しか設置できません。
医院の場合はビル用のエレベーターとなります。
(最近は小規模建物用小型エレベーターも登場しています。)
既存建物にEVを設置する場合は建築基準法、構造等の複雑な建築条件をクリアーしないといけませんので、事前に行政や確認審査機関と充分協議する必要があります。
一般的には既存建物にEVを設置するのは難しい場合があると考えていただいた方が良いと思います。
建築士資格のない方から既存建物にEVを簡単に設置できると言われたことを信じてトラブルになったケースも実際にあります。
ですから既存医院にEV設置をお考えの場合は必ず1級建築士の資格のある方にご相談されるようお願いいたします。
既存医院にエレベーターを設置した事例
私のコラムを読まれたドクターからエレベーター設置と全面改装のご相談がありました。
既存医院にエレベーターを設置することはドクターの強い要望でした。
既存医院の建築確認申請、検査済証がきっちり保管されており、以前整形外科医院で設置した私の経験もいかせ、今回は役所との協議もスムーズに行えました。
旧耐震の建物であったため耐震診断も行われましたが問題ありませんでした。
※「旧耐震」については下記のページをご参照ください。
下の写真のように1階の待合室にエレベーターを設置しています。
以前は受付があった位置です。
具体的にはまずどこにエレベーターを配置するかという検討を行いました。
まず屋外は動線やスペースの問題で難しく、中庭も構造的に困難であることが分かりました。
建物内の構造体(柱・梁・基礎等)と干渉しない位置で動線的な問題の少ない場所に配置させました。
既存建物基礎の位置が高めであったためEVピットの深さが限定され、浅型のEVピット仕様のエレベーター(条件に合う仕様のメーカーは1社のみでした)を採用することになりました。
ピット工事の様子です。
建物内にエレベーターを設けたため建築基準法上は床面積が増えず、また用途変更もないため新たに建築確認申請を出す必要はなく、エレベーター確認申請だけ提出し、検査を受けました。
手続的にも複雑にならず対応できました。
クリニックの詳細はこちらから → 大櫛耳鼻咽喉科 はな・みみサージクリニック
医院再生ークリニックのリフォームー <目次>
- 法規制について
- 耐震性について
- 設備について
- レイアウト・デザインについて
- プロジェクトの流れ・費用(調査、設計監理)について
- 医院リフォームの実例<Before/After>
- 既存医院にエレベーターを設置できるか?
- 新耐震基準と旧耐震基準
クリニックの建築・リフォームのご計画にお悩みの方は、下記リンクからご相談をお受けしています。